夏の川遊びや海水浴。「浅いところで遊ぶだけだから」と思っていても、子供は一瞬で足をとられます。もし流されたとき、子供が自分の力だけで顔を水面に出し続けるのは簡単ではありません。
製造現場の安全管理に14年携わってきた立場から言うと、安全装備は「着けているか」だけでなく「正しい物を、正しく着けているか」で効果が決まります。この記事では、国土交通省・こども家庭庁・警察庁の資料、NPO法人 川に学ぶ体験活動協議会(RAC)の認定基準、メーカー公式の仕様だけを根拠に、子供用ライフジャケットの選び方をまとめました。
先に結論を書きます
- 子供には股ベルト(股ひも)付きを。国土交通省・こども家庭庁とも、子供は股ひも・股下ベルトの付いたものを着せるよう呼びかけています。
- 体に合うサイズを選び、ベルトを締めて固定する。体に合わないと、水中で脱げてしまう場合があります(こども家庭庁)。
- 川遊びには「固型式」。膨張式は落水時に膨らむタイプなので、常時水に入る活動には固型式が向いています(こども家庭庁)。
- 川で使うなら、川遊び向けの認定品が一つの目安。国土交通省は、NPO法人 川に学ぶ体験活動協議会(RAC)の認定を例に挙げています。
- モーターボートなど小型船舶に乗るなら「桜マーク」。免許が必要な小型船舶では、原則として、国の安全基準に適合したライフジャケット(桜マーク)を着用させる義務があります(船室内など例外あり)。桜マークにもタイプがあるので、乗る船で使えるタイプか確認してください。
- この記事では、メーカー公式ページでRAC認定と表示され、浮力・対象体重を公式に確認できた2製品を紹介します。
子供用ライフジャケットの選び方|4つのポイント
①股ベルト(股ひも)が付いていること
国土交通省の河川水難事故防止ポータルサイトは、「とくにこどもの場合は体がやわらかく脱げやすいため、股下ベルトがついているものを着せましょう」としています。こども家庭庁も「こどもは、股ひもの付いたものを着用します」と書いています。
股ベルトは「付いている」だけでは意味がありません。着せるたびに、股ベルトまで留めてください。
②体に合ったサイズを選び、ベルトで固定する
こども家庭庁は、体に合わないライフジャケットを着ると浮力が身体に正しく伝わらず、水中で脱げてしまう場合があるとしています。大人用を子供に着せるのは避け、メーカーが示す目安体重・目安胸囲に合うものを選びます。
③浮力は「使う場面の基準」と「目安体重」で選ぶ
「浮力は何kgあれば安心か」は、使う場面の基準によって違います。
- 小型船舶用(国の安全基準):浮力7.5kg以上。体重40kg未満の小児用は5kg以上、体重15kg未満の小児用は4.0kg以上(国土交通省「ライフジャケットの安全基準と技術基準」)。
- 川遊び用(RAC川育ライフジャケット):浮力に加えて構造の条件があり、子ども用・幼児用は股下ベルトが必須。幼児用は頭部の浮力補助のため背面首元にピロー(枕)が付いていること。RACは自らのモデルの説明で「着用者の体重の10%以上の浮力が目安」としています。
どちらの場合も、メーカーが示す目安体重の範囲内で使うことが前提です。
④使う場所に合った認定・表示を確認する
- 川・水辺で遊ぶ:国土交通省は、川の活動に適したライフジャケットの認定の例として、RACの認定を紹介しています。主な基準は「流れの中で脱げにくい構造」「動きやすく泳ぎやすい」「呼吸を確保しやすい浮遊姿勢になる」「川の活動に必要十分な強度」の4つです。
- 船(免許が必要な小型船舶)に乗る:国の安全基準への適合を確認したライフジャケットには桜マークがあります。桜マーク品にもタイプA・水上バイク用などの種類があり、乗る船で使えるタイプか確認が必要です。ただし国土交通省は、桜マークは船舶用として合格したもので、すべての製品が流水での活動に適しているとは限らないとしています。
つまり「川で遊ぶ用」と「船に乗る用」は、見るべき表示が違います。両方の場面で使う予定があるなら、それぞれの条件を満たすか確認してください。
公式仕様で確認した子供用ライフジャケット2製品
どちらもAQA(株式会社キヌガワ)の製品で、メーカー公式ページに「RAC認定」と表示されています。数値はすべてメーカー公式ページの記載です。
小学生くらい:AQA ライフジャケットキッズ(KA-9026)
| 目安身長 | 110〜150cm |
|---|---|
| 目安体重 | 15〜40kg |
| 目安胸囲 | 50〜75cm |
| 浮力 | 5.6kg |
| 股ベルト | あり(股掛ベルト) |
| そのほか | 肩・腹・腰の3点で調整、レスキューハンドル、下部は水抜け用メッシュ |
| 認定 | RAC認定(メーカー公式ページの表示) |
肩・腹・腰の3か所で調整できるので、体に合わせて締めやすい作りです。メーカーは、肩とベルト部分について580Nで10分の引張テストをクリアしたとしています。
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幼児(体重15kg以下):AQA ライフジャケットインファントDXⅡ(KA-9027)
| 目安身長 | 90〜100cm |
|---|---|
| 目安体重 | 15kg以下 |
| 目安胸囲 | 50cm以下 |
| 浮力 | 4.0kg |
| 股ベルト | あり(股掛ベルト) |
| そのほか | 頭を支える枕付き、レスキューハンドル、下部は水抜け用メッシュ |
| 認定 | RAC認定(メーカー公式ページの表示) |
首の後ろに頭を支える枕が付いた幼児向けモデルです。メーカーは、肩とベルト部分について580Nで5分の引張テストをクリアしたとしています。目安身長は90〜100cmなので、まずは体重と身長の両方が範囲内か確認してください。
2製品の比較と、向いている人・向いていない人
| キッズ(KA-9026) | インファントDXⅡ(KA-9027) | |
|---|---|---|
| 目安体重 | 15〜40kg | 15kg以下 |
| 目安身長 | 110〜150cm | 90〜100cm |
| 浮力 | 5.6kg | 4.0kg |
| 頭を支える枕 | なし | あり |
| 向いている | 川遊び・海水浴に行く小学生 | 水辺に連れて行く体重15kg以下の幼児 |
| 向いていない | 体重15kg未満の子、船に乗る予定がある場合(桜マーク品を確認) | 体重15kgを超えた子、船に乗る予定がある場合(桜マーク品を確認) |
体重15kg前後で身長が100〜110cmの子は、2製品どちらの目安にも当てはまらない場合があります。店頭で試着し、メーカーの目安の範囲に入るものを選んでください。
正直に書いておく点
- この2製品に桜マークがあるとは、公式ページには書かれていません。船(小型船舶)に乗るときは、船に備え付けのものや、桜マーク付きの小児用を確認してください。
- RACの認定は新品が対象です。RACは、浮力は使い始めから徐々に落ち、使用年数や頻度によっては必要な浮力を下回る可能性があるとしています。毎シーズン、破れ・ベルトの傷みを確認してください。
- ライフジャケットを着ていても、川は安全ではありません。RACは、岩の直下などの白く泡立つ流れでは浮力が減ることや、水面下のえぐれた岩の付近に強い引き込みがあることなど、着用していても残るリスクを挙げています。
- 大人の見守りの代わりにはなりません。警察庁も、子供一人では水遊び等をさせず、保護する責任のある人は子供から離れないよう呼びかけています。
最後にちょこっとお勉強:なぜ股ベルトがないと危ないのか
ライフジャケットは、浮力で体を水面へ持ち上げる道具です。こども家庭庁が書いているとおり、体に固定されていないと浮力が身体に正しく伝わらず、水中で脱げてしまう場合があります。RACも、ずり上がりや不意に脱げることがないよう、ベルトを締めて体に確実にフィットさせることを求めています。
国土交通省は、子供は体がやわらかく脱げやすいとしています。股の下を通るベルトは、ジャケットが上へずれて抜けるのを下から止める役目です。RACの認定基準でも、子ども用・幼児用には股下ベルトが必須で、股下ベルトだけの強度試験(580N以上を5分)まで設けられています。
よくある質問
Q. 浮き輪があればライフジャケットはいらない?
A. 国土交通省は、川は下方向に引き込む流れが発生する場所があり、浮き輪では足から身体ごと引き込まれる可能性があるとして、ライフジャケットの着用をすすめています。首かけ式の浮き輪については首かけ式浮き輪の記事も参考にしてください。
Q. ひざ下くらいの浅い場所でも必要?
A. 必要です。国土交通省は、子供のひざ下くらいの水位でも、強い流れで流されたり、近くに思わぬ深みがあったりするとしています。こども家庭庁も、大人の膝程度の浅さでも流れが速いと大人でも流され、子供は体重が軽いのでさらに流されやすいとしています。
Q. 水に入らず、河原で遊ぶだけなら?
A. 国土交通省は、水際から3〜5m程度陸地側に立ち入る可能性があるときは、ライフジャケットを着けることで落水などの危険度を大きく下げられるとしています(川の状態や足場によります)。
Q. 船に乗るときもこのライフジャケットでいい?
A. 小型船舶では、平成30年2月から原則としてすべての乗船者にライフジャケットの着用が義務になりました。船長は、国の安全基準に適合したもの(桜マーク)を着用させる必要があります(国土交通省。船室内など一部の例外あり)。この記事の2製品は川遊び向けの認定品として紹介しているので、船では桜マーク付きのものを使ってください。
Q. 大人も着けるべき?
A. はい。警察庁は、釣りや水遊びなどで水辺に行くときは、大人も子供も必ずライフジャケットを着用するよう呼びかけています。
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まとめ
子供用ライフジャケットは、①股ベルト付き、②体に合うサイズをベルトで固定、③体重に合った浮力、④使う場所に合った認定・表示(川ならRACなどの川遊び向け認定、船なら桜マーク)の4つで選びます。そして、着ていても大人の見守りは外せません。水辺に行く前に、子供と一緒に一度試着して、股ベルトまで留める練習をしておくと安心です。

