お正月、家族みんなでお雑煮を囲む。子供が「ぼくも食べたい」と言う。餅って、何歳から食べさせていいんだろう。
調べてみて分かったのは、意外な事実でした。先に結論を書きます。
- 「餅は◯歳から」という公的な年齢の線引きは、ありません。東京消防庁も消費者庁も、餅について年齢を書いていません
- 判断材料になるのは「かむ力」の発達です。大人に近い咀嚼ができるのは3歳頃、かむ動きと飲み込む動きがかみ合うのは6歳頃とされています(消費者庁)
- 食べさせるなら「小さく切る・座って食べる・大人が隣で見る」。そして、詰まったときの手当ては乳児と1歳以上で違います
この記事では、公的機関の資料の原文だけを使って、年齢の代わりに何を見て判断するかを整理します。
「餅は何歳から」という公的な基準はありません
これは探した結果として書いています。
東京消防庁の「餅などによる窒息事故に注意!」にも、消費者庁の子どもの窒息に関する注意喚起にも、餅を食べさせてよい年齢は書かれていません。
対照的に、年齢がはっきり書かれている食品があります。消費者庁(令和3年1月)の注意喚起の見出しです。
硬い豆やナッツ類等は5歳以下の子どもには食べさせないで
豆・ナッツには「5歳以下はNG」という線がある。餅にはない。ネットで「◯歳から」と断言している記事を見かけても、それは公的な基準ではなく、書き手の判断です。
だからこの記事では、年齢で答えるのをやめて、「何が揃っていれば食べさせられるか」で答えます。
ただし、保育の現場には一つだけヒントがあります
内閣府・文部科学省・厚生労働省の「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」は、食事中の注意事項として次のように書いています(消費者庁の注意喚起で引用されている部分です)。
過去に、誤えん、窒息などの事故が起きた食材(例:白玉風の団子、丸のままのミニトマト等)は、誤えんを引き起こす可能性を保護者に説明し、使用しないことが望ましい。
保育園では、白玉のような団子は「出さないのが望ましい」食材として扱われています。餅は、白玉よりさらに粘りがあって、かみ切りにくい食べ物です。保育の現場がこの線を引いていることは、判断材料として知っておいて損はありません。
判断の軸は「かむ力」です
餅は、かみ切って、かみつぶして、まとめて飲み込むことが必要な食べ物です。つまり問われるのは、年齢そのものよりかむ力と飲み込む力です。
消費者庁(令和3年1月)の資料に、その発達の目安が書かれています。
大人に近い咀嚼(食べ物を歯でかみ砕くこと)ができるようになり、飲み込んだり吐き出したりする力が十分に発達するのは3歳頃ですが、その2つを協調させることができるようになるのは6歳頃と言われています。
同じ資料で、医師(武蔵野赤十字病院)がこう解説しています。
大人に準じた咀嚼が可能になるのは、乳歯列が完成する3歳以降です。さらに咀嚼と嚥下の協調運動が完成するのは、6歳臼歯の萌出後と考えられています。
| 時期の目安 | かむ・飲み込む力 |
|---|---|
| 〜3歳頃 | 奥歯(乳歯)がそろう途中。大人のようにはかみ砕けない |
| 3歳頃 | 乳歯列が完成し、大人に近い咀嚼ができるようになる |
| 6歳頃 | 6歳臼歯が生え、かむ動きと飲み込む動きがかみ合う |
豆・ナッツの「5歳以下はNG」も、この発達を根拠にしています。餅に同じ線を当てはめる公的な根拠はありませんが、同じ物差しで考えることはできます。
数字で見ると、危ないのは「小さい子」です
消費者庁が厚生労働省の人口動態調査を分析した結果です。
平成26年から令和元年までの6年間に、食品を誤嚥して窒息したことにより、14歳以下の子どもが80名死亡していました。そのうち5歳以下が73名で9割を占めていました。
餅に限った数字ではありません。ただ、食べ物で窒息して亡くなる子供の9割が5歳以下だという事実は、「何歳から」を考えるときの前提になります。
正直に書いておくこと
東京消防庁のデータでは、餅などを詰まらせて救急搬送された人は令和2〜6年の5年間で338人。そのうち約9割以上が65歳以上の高齢者です。
つまり「餅の窒息事故」の大半は子供ではありません。ここを大げさに書くつもりはありません。
それでもこの記事を書くのは、子供の場合「かむ力が発達途中」という、高齢者とは別の理由で同じ事故が起こりうるからです。そして、高齢者と子供が同じ食卓に並ぶのが、まさにお正月です。
年齢の代わりに見る3つの条件
ここまでの資料をもとに、「食べさせるかどうか」を判断する条件を3つにまとめました。年齢ではなく、目の前の子供の様子で判断できるようにしています。
| 条件 | 見るところ | 根拠 |
|---|---|---|
| ① 奥歯でかめる | 乳歯の奥歯がそろっていて、硬めのものを奥歯でかみつぶしている | 大人に近い咀嚼は乳歯列が完成する3歳頃から(消費者庁) |
| ② 座って食べることに集中できる | 食事中に立ち歩かない・しゃべり続けない・ふざけない | 遊びながら・歩きながら・寝転んだままの食事は窒息リスクが高い(消費者庁) |
| ③ 大人が隣で見ていられる | 食べ終わるまで目を離さない大人がいる | 「乳幼児や高齢者と一緒に食事をする際は、食事の様子を見守る」(東京消防庁) |
3つのうち1つでも欠けるなら、その日は見送る。それがこの記事の答えです。
特に②と③は、年齢が上がっても自動的には満たされません。5歳でも、いとこと走り回りながら食べるなら条件を満たしていないことになります。
食べさせるときのやり方
東京消防庁の「餅による事故を防ぐポイント」
原文をそのまま引用します。
1 餅は小さく切って、食べやすい大きさにしましょう。
2 急いで飲み込まず、ゆっくりと噛んでから飲み込みましょう。
3 乳幼児や高齢者と一緒に食事をする際は、食事の様子を見守るなど注意を払いましょう。
4 餅を食べる前に、お茶や汁物を飲んでのどを潤しておきましょう。
5 いざという時に備え、応急手当の方法をよく理解しておきましょう。
子供向けには、もう少し足します
消費者庁が子供の食品による窒息について挙げている注意点から、餅に関係するものを抜き出しました。
・遊びながら、歩きながら、寝転んだまま食品を食べさせないようにしましょう。
・食品を口に入れたまま話したり、何かをしながら食事をしたりさせないようにしましょう。
・食事中に眠くなっていないか、正しく座っているかに注意しましょう。また、食事中に驚かせないようにしましょう。
泣いているときなどに、なだめようとして、食品を与えるのはやめましょう。
まとめると、子供に餅を出すときの手順はこうなります。
- 小さく切る(子供の一口で無理なく入る大きさに。大人の感覚より小さく)
- 先にお茶や汁を一口飲ませる
- 座らせてから渡す。立ち歩き・テレビを見ながら・ふざけながら、はさせない
- 食べ終わるまで大人が隣にいる
- 眠そう・泣いている・興奮しているときは出さない
お正月に事故が起きやすい理由
東京消防庁のデータでは、餅などによる救急搬送は1月が135人で最多、次いで12月が42人。この2か月で全体の半数以上です。そして搬送された人の約7割が中等症以上(入院が必要)でした。
お正月は、ふだんの食卓と条件が変わります。
- 人が多くて、誰が子供を見ているのか曖昧になる——「誰かが見ているだろう」が一番危ない
- いとこや兄弟と遊びながら食べる。走り回る
- 祖父母が「ちょっとだけ」と渡す。親が知らないうちに口に入っている
- 夜更かしで眠いまま食べる
消費者庁は、兄弟についてこう書いています。
年長の子供が、乳幼児にとって危険な食品を与えないよう注意しましょう。
おすすめは、集まる前に「この子に餅はまだ出さない」「出すならこの大きさで」と家族に一言伝えておくことです。祖父母の家では、食べ物以外にも危ないものが増えます。帰省先の実家は赤ちゃんに危険がいっぱいもあわせて確認してください。
もし詰まらせたら——乳児と1歳以上で手当てが違います
ここがいちばん覚えておいてほしいところです。消費者庁の資料に「救急蘇生法の指針2015」から抜粋された手順が載っています。
気づくサイン
- 苦しそうで顔色が悪く、泣き声も出ない(乳児)
- 親指と人差し指でのどをつかむ仕草(「窒息のサイン」。1歳以上)
- 声が出ない、顔色が急に真っ青になる(東京消防庁)
乳児(1歳未満)
反応がある間は頭側を下げて背部叩打と胸部突き上げを実施します。乳児では腹部突き上げは行いません。
- 背部叩打:片手で赤ちゃんのあごをしっかり持ち、その腕に胸とおなかを乗せて頭を低くしてうつ伏せにし、もう一方の手のひらの付け根で背中を力強く数回連続して叩く
- 胸部突き上げ:あお向けにして頭側を下げ、指2本で胸の真ん中(両乳首を結ぶ線の少し足側)を力強く数回連続して押す
1歳以上
窒息と判断すれば、ただちに119番通報を誰かに依頼した後に、腹部突き上げや背部叩打を試みます。…1つの方法を数度繰り返しても効果がなければ、もう1つの方法に切り替えてください。
- 背部叩打:後ろから、手のひらの付け根で左右の肩甲骨の間を力強く叩く
- 腹部突き上げ:後ろから腕を回し、握りこぶしをへその上・みぞおちより十分下に当て、手前上方に突き上げる。子供が相手なら大人がひざまずくとやりやすい
- 腹部突き上げをしたら、異物が取れても必ず医師の診察を受ける(内臓を傷めている可能性があるため)
反応がなくなったら
ただちに心肺蘇生を始めます。AEDがあれば周りの人に持ってきてもらいます。
時間の感覚
消費者庁の資料にはこう書かれています。
窒息後、5〜6分程度で呼吸が止まり意識を失い、心臓が止まり、大脳が障害されます。成人に比べて乳幼児は酸素不足に対する耐性が低いため、低酸素症が重篤化しやすいといわれます。
救急車を待ってから始めるのでは間に合いません。119番は誰かに頼み、自分はその場で手当てを始める——これを家族全員が知っているだけで、お正月の食卓の安全度は変わります。東京消防庁はYouTubeの公式チャンネルで手当ての動画を公開していますし、消防署の救命講習も受けられます。
よくある質問
2歳の子に、小さく切った餅を少しだけならいいですか?
公的な基準がない以上、「ダメ」とも「いい」とも言い切れません。ただ、消費者庁の資料では大人に近い咀嚼ができるのは3歳頃とされていて、食品による窒息死の9割は5歳以下です。急いで食べさせる理由がないなら、待つほうを選んで損はない、というのがこの記事の考えです。どうしても出すなら、上の3条件(奥歯・座って集中・大人が隣)を全部満たしたうえで。
小さく切れば安全ですか?
リスクは下がりますが、ゼロにはなりません。東京消防庁のポイントも「小さく切る」だけで終わらず、「ゆっくりかむ」「見守る」「のどを潤す」「応急手当を知っておく」の5つがセットになっています。大きさだけで安心しないでください。
白玉やみたらし団子は?
保育施設のガイドラインで「白玉風の団子」は使用しないことが望ましい食材の例に挙がっています。東京消防庁の統計も「餅など」に団子を含めて集計しています。餅と同じ扱いで考えてください。
豆やナッツと同じように「5歳まで」と考えればいいですか?
「5歳以下はNG」は豆・ナッツについての公的な基準で、餅には適用されていません。ただ、根拠になっている「かむ力の発達」は同じなので、目安として参考にするのは筋が通っています。豆・ナッツやぶどうについては子供の窒息を防ぐ食卓ルールにまとめています。
まとめ
- 「餅は◯歳から」という公的な年齢基準はない。豆・ナッツ(5歳以下NG)とは違う
- 判断の軸はかむ力。大人に近い咀嚼は3歳頃、かむと飲み込むがかみ合うのは6歳頃(消費者庁)
- 保育施設では白玉風の団子は出さないのが望ましい食材とされている
- 年齢の代わりに①奥歯でかめる ②座って集中できる ③大人が隣で見ていられるの3条件。1つでも欠けたら見送る
- 出すなら小さく切る・先に汁物・座らせる・食べ終わるまで見る。お正月は「誰が見ているか」を決めておく
- 詰まったら乳児は背部叩打+胸部突き上げ(腹部突き上げはしない)、1歳以上は背部叩打・腹部突き上げ。窒息から5〜6分で呼吸が止まる
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