富士山が大きく噴火したら、首都圏を含む広い範囲に火山灰が降るおそれがあるといわれます。小さな子どもがいる家では、「逃げたほうがいいの?」「家にいて大丈夫?」「何を備えておけばいい?」と不安になりますよね。内閣府が2025年3月にまとめた「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」と、内閣府・気象庁のリーフレット「火山灰への備え」をもとに、子育て家庭が今からできることを整理します。
先に結論を書きます
- 火山灰への対応は、できる限り自宅等で生活を続けることが基本です。内閣府は、降灰は「緊急的・直接的な命の危険性は低い」としています
- ただし、降灰量が30cm以上ある地域の木造家屋や、土石流の危険がある地域などは、避難が必要になります
- 降灰が続くと物資が届きにくくなるため、リーフレットは1週間分程度の備蓄を呼びかけています。防塵マスク・ゴーグルなどの降灰対策用品も備蓄リストに入っています
- 灰が降っている間は不要不急の外出をしない。外ではマスクやハンカチで鼻と口を覆い、コンタクトレンズは使わずゴーグルかメガネを。ぜんそくなど呼吸器の病気がある人は、灰が降る前から屋内にとどまります
※この記事は火山から離れた地域に火山灰が降る場合の備えです。火山の近くで起きる大きな噴石・火砕流・融雪型火山泥流などは、避難までの時間がほとんどなく、噴火警報と避難計画に基づく事前の避難が必要です。お住まいの地域の避難計画を確認してください。
火山灰が降ると何が起きる?——降灰量ごとの影響
内閣府のガイドラインは、降灰量に応じて次のような影響が出るとしています。
| 降灰量 | 主な影響 |
|---|---|
| 微量 | 鉄道の地上路線が運行停止 |
| 3mm以上(雨のとき) | 電線などを支える碍子(がいし)の絶縁が低下して停電 |
| 3cm以上(雨のとき)/10cm以上(乾燥時) | 二輪駆動車が通行不能 |
| 30cm以上(雨のとき) | 火山灰の重みで倒壊する木造家屋が発生 |
このほか、交通に支障が出ると物資の配送や生活物資の入手が難しくなり、上下水道や通信にも影響が出るとされています。
ガイドラインは、降灰量と被害の大きさに応じて4つの「ステージ」に分けています。
| ステージ | 降灰量など | 住民の基本的な行動 |
|---|---|---|
| 1 | 微量〜3cm | 自宅等で生活を継続 |
| 2 | 3〜30cm(被害が比較的小さい) | 自宅等で生活を継続 |
| 3 | 3〜30cm(被害が比較的大きい) | 自宅等で生活を継続(状況に応じて生活可能な地域へ移動) |
| 4 | 30cm以上、または降灰後に土石流が想定される範囲 | 原則避難(噴火直後は自宅や堅牢な建物に退避) |
なお、通院による人工透析や介護サービスが必要な人など、降灰に伴う社会活動の低下などで自助・共助による生活が継続できず直ちに生命に危険が及ぶ人は、ステージ3・4で原則避難、ステージ2では自宅等で生活を続け、状況に応じて医療の対応が可能な地域へ移動とされています。要配慮者でも、自宅等で生活を続けられる人は一般の住民と同じ行動をとります。
今からできる備え——1週間分の備蓄と降灰対策用品
リーフレットは、自宅での生活が長引く可能性も考えて1週間分程度の備蓄を呼びかけています。備蓄品チェックリストには、ほかの災害と共通の物に加えて、降灰対策用品が挙がっています。
| 分類 | リーフレットに挙がっている主な物 |
|---|---|
| 降灰対策用品 | 防塵マスク、安全ゴーグル、スコップ、軍手、防塵カバー(エアコン室外機用) |
| 飲料水・食料 | 水、アルファ米やレトルト食品、ビスケットなど |
| 衛生用品 | 簡易トイレ、トイレットペーパー、生理用品・おむつ、マスク、洗面用具 |
| 医薬品 | 常備薬、ばんそうこう、包帯、消毒液 |
| その他 | 懐中電灯、携帯ラジオ(手動充電式が便利)、携帯充電器・予備電池 |
子どもがいる家庭では、おむつ・ミルク・離乳食・子どもの常備薬など、その子に必要な物を1週間分で数えてみてください。水の量の目安は備蓄水は家族で何リットル必要?、子どもの非常食は子供の非常食と液体ミルクの備蓄、トイレは災害用の携帯トイレ・簡易トイレで解説しています。
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灰が降る直前・降っている間にすること
降る直前
- 灰が降り始める前に帰宅するのが理想です
- ドアや窓を閉め、すき間や通気口には湿ったタオルやテープを貼る
- 壊れやすい電化製品にカバーをかける
- 雨どいや配水管を排水溝から外す
- ぜんそく・慢性気管支炎など呼吸器の病気がある人は、屋内にとどまり、不必要に火山灰にさらされないようにする
降っている間
- 不要不急の外出はしない(子どもの外遊びも控えましょう)
- 屋外にいるときは、マスクやハンカチで鼻と口を覆う
- ラジオなどで情報を集める
- 視界が悪い中での車の運転は避ける。どうしても必要なときはヘッドライトをつけて徐行する
- 屋外ではコンタクトレンズを使わず、ゴーグルかメガネを着用する。灰が目に入ったら、手でこすらずに水で洗い流す
- 視界が悪いなど屋外での行動が危険なときは、基本的に屋内にとどまる
気象庁は、降る灰の厚さに応じて「多量」「やや多量」「少量」の3つの階級で降灰量を伝えます。「多量」(1mm以上)では外出を控える、「やや多量」(0.1〜1mm)では注意が必要とされています。
正直に書いておく点
- 噴火の時期や規模、どこにどれだけ灰が降るかは、事前には分かりません。ガイドラインも、降灰の予測には不確実性があることを前提に対策を検討しています
- 赤ちゃんや小さな子ども向けの火山灰対策について、この記事で参照した日本の公的資料(内閣府・気象庁)には特別な記載が見当たりませんでした。子どものマスクについては、国際的な専門家ネットワーク(IVHHN)の指針をもとに、下の「子どものマスクはどう選ぶ?」で整理しました。持病がある場合など、気になることはかかりつけ医に相談してください
- 「1週間分」は内閣府・気象庁のリーフレットの目安です。物流の回復にどれくらいかかるかは、降灰の状況によって変わります
子どものマスクはどう選ぶ?——「PM2.5対応」は条件つきで有効
大人には、顔によく合ったN95などの規格に合格した防じんマスクが最も効果的とされます(IVHHN)。でも、IVHHNも、マスクはふつう子どもの顔に合うようには作られていないとしています。この記事で参照した日本の公的資料には子ども向けの記載が見当たらなかったため、ここではIVHHN(国際火山健康被害ネットワーク)の指針と、環境省のPM2.5(大気汚染)に関するQ&Aをもとに整理します。IVHHNの指針は、米国地質調査所(USGS)や汎米保健機構(PAHO)も同じ内容を掲載しています。
いちばんの対策は「灰のない屋内で過ごす」こと
IVHHNは、子どもや乳児など影響を受けやすい人にとって、灰にさらされる量を減らす最も効果的な方法は、灰のない場所(できれば建物の中)にいることだとしています。マスクは、どうしても屋外に出るときの次の手段です。
大人用のN95は、子どもには大きすぎることがある
IVHHNは、大人にとって最も効果的なのは顔によく合った、規格認証のあるマスク(N95、日本では国家検定のDS2など)だとしています(IVHHNはN95と同等のものとしてDS2を挙げています。環境省のQ&AはPM2.5対策としてDS1以上としています)。ただし、これらは大人の顔に合うように作られていて、子どもには大きすぎることがあるとも書いています。また、マスクはふつう子どもの顔に合うようには作られておらず、子ども向けの小さいマスクを作るメーカーはあるものの、乳児向けには作られていないとしています。
「PM2.5対応」マスクはOK?——フィルターは期待できるが「顔に合うか」が条件
IVHHNは、規格認証のない「PM2.5対応」をうたうマスクについて、灰をろ過する性能は高いと思われる一方、顔にぴったり合うように作られていないことが多く、十分な効果が出ない場合があるとしています。マスクの効果は、①フィルターがどれだけ粒子を止めるかと、②顔とのすき間から灰が入らないかの2つで決まるからです。
環境省のPM2.5(大気汚染)に関するQ&Aは、火山灰を想定した資料ではありませんが、一般用マスク(不織布マスク等)は「ある程度の効果は期待できますが、PM2.5の吸入防止効果はその性能によって異なると考えられます」とし、N95やDS1以上の防じんマスクはPM2.5の吸入を減らす効果があるとしたうえで、どのマスクも顔の大きさに合ったものを、空気が漏れないように着用しなければ十分な効果は期待できない、また少し息苦しいので長時間の使用には向かない、としています。
つまり「PM2.5対応ならOK」は半分正解で、「PM2.5対応で、しかも子どもの顔に合っていて、すき間なく着けられること」が条件です。
子ども用マスクを選ぶときに見るところ(当ブログの整理)
- 子どもの顔の大きさに合うサイズ——大きすぎると、すき間から灰が入ります
- すき間を減らす作り——IVHHNは、よいマスクの特徴として、曲げられる鼻の金具(ノーズワイヤー)や調整できるひもを挙げています
- 微粒子を止める性能の表示——「PM2.5対応」など。IVHHNは、プリーツ型のサージカルマスクも顔によく合っていれば灰をよくろ過するとしています
- 着けて息苦しくないか——IVHHNは、子どもにマスクを着けるときは着け方を教え、息がしにくくなっていないかよく注意するよう呼びかけています
着けたら「漏れ」を確かめる
IVHHNが紹介している確かめ方は、着けたあと両手でマスクを覆い、強めに息を吐いてマスクの縁から空気が漏れないかを見る方法です(弁=バルブ付きのマスクは、弁を手でふさいでから息を吐くか、強く息を吸って確かめます)。漏れるときは付け直し、それでも合わなければ別のマスクを試します。子どもと一緒に、灰が降る前に練習しておくと安心です。
やってはいけないこと・効果が低いもの
- マスクや布をぬらしても、ろ過する力は上がりません(IVHHN)
- バンダナやハンカチなど布だけでは、多くのマスクより効果が低く、顔にも合いにくい(IVHHN)。内閣府・気象庁のリーフレットは「屋外にいる場合は、マスクやハンカチで鼻と口を覆いましょう」としています。ただしIVHHNによると布はマスクより効果が低いので、ハンカチはマスクがないときの手段と考えてください(当ブログの整理)
- 寝ている間のマスクはすすめられていません。顔に合ったままになりにくく、息もしにくくなるためです(IVHHN)
- 子ども向けの小さいマスクはあっても、乳児向けには作られていないとされるので、赤ちゃんは屋内で過ごすことを基本にしてください
通販で探すときは、対象年齢・サイズ(顔の幅)の表示を確認し、赤ちゃんには使わないでください。
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灰が積もったあとの片付け(除灰)
リーフレットは、除灰作業について次の注意を挙げています。子どもには作業をさせず、屋内で過ごしてもらいましょう。
- 屋根に登るときは、無理に取り除こうとせず、人が乗っても大丈夫か確かめてから始める
- はしごや屋根の上は火山灰でとても滑りやすい。作業は命綱とヘルメットを着用して2人以上で行う
- 清掃するときは、火山灰を水で湿らせて巻き上がらないようにし、袋詰めする
- 火山灰は雨どいや下水に詰まりやすいので、流さない
- 水浸しにしない(固まって清掃が難しくなる)
宅地から出た火山灰は、市町村が処分することになっています。出し方は、お住まいの市町村の案内に従ってください。
最後にちょこっとお勉強:「雨のとき」と「乾いているとき」で数字が違う
ガイドラインの数字をよく見ると、「降雨時3cm以上」「乾燥時10cm以上」のように、雨が降っているかどうかで分けて書かれています。二輪駆動車が通れなくなるのは、乾燥していれば10cm以上ですが、雨のときは3cm以上です。
停電(3mm以上)や木造家屋の倒壊(30cm以上)も、ガイドラインでは「降雨時」の数値で示されています。少なくとも道路については、雨のときのほうがずっと少ない量で通れなくなるということです。屋根の上の灰を取り除くときは、リーフレットのとおり、無理に取り除こうとせず、人が乗っても大丈夫か確かめてから始めてください。
よくある質問
Q. 子どもを連れてすぐ遠くへ避難したほうがいい?
ガイドラインは、火山から離れた地域では、できる限り降灰域内に留まって自宅等で生活を続けることを基本としています。避難が必要なのは、降灰量30cm以上の地域の木造家屋や土石流の危険がある地域など、状況によって直ちに命の危険がある場合です。自治体の呼びかけに従ってください。
Q. 普通のマスクでもいい?
リーフレットは、やむを得ず外出するときや屋外で作業するときは、マスクを常に着用し、長時間の場合はしっかりとした防塵マスクを着用するよう呼びかけています。灰が降っている中で屋外にいる場合は、マスクやハンカチで鼻と口を覆いましょう。
Q. 地震の備えと何が違う?
水・食料・簡易トイレなどは共通です。違いは、防塵マスク・ゴーグル・スコップ・エアコン室外機の防塵カバーなどの降灰対策用品です。また、降灰では自宅での生活が長引くことも想定して、リーフレットは1週間分程度の備蓄を呼びかけています。地震への備えは赤ちゃん・子供がいる家の防災セットもあわせて見直してください。
まとめ
- 火山から離れた地域の降灰は、できる限り自宅で生活を続けるのが基本。30cm以上の地域の木造家屋や土石流の危険がある地域は避難
- 1週間分程度の備蓄に、防塵マスク・ゴーグル・スコップなど降灰対策用品を加える
- 降灰中は外出を控え、外ではマスク・ハンカチで鼻と口を覆う。コンタクトは使わずゴーグルかメガネを。目に入ったらこすらず水で洗う
- 道路は雨のときのほうが少ない降灰で通れなくなる。除灰は子どもにさせず、大人2人以上で、命綱とヘルメットを着けて安全に
- 子どものマスクは「PM2.5対応」でも、顔に合ってすき間なく着けられることが条件(IVHHN・環境省)。子ども向けの小さいマスクはあっても乳児向けには作られていないとされるので、赤ちゃんは屋内で

