上の子がカラフルな小さい磁石や、水で膨らむビーズで遊んでいる。気づいたら下の子がそばにいて、床に1粒落ちていた——。数百個入りのおもちゃだと、1つ減っても気づきにくいものです。消費者庁・国民生活センター・NITE(製品評価技術基盤機構)の資料をもとに、なぜこの2つが特に危ないのか、どう防ぐのかを整理します。
先に結論を書きます
- 強い磁石を2個以上飲み込むと、胃や腸の壁を挟んでくっつき、自然に出てこなくなることがあります。挟まれた部分の血流が止まり、穴が開いたり腸閉塞になったりして、開腹手術が必要になるおそれがあります
- 水で膨らむボールは、お腹の中で水分を吸って膨らみ、腸を詰まらせることがあります。国民生活センターには、乳児が飲み込んで開腹手術になった事例が医師から寄せられています
- どちらも、飲み込んだ・飲み込んだかもしれないときは、すぐに医療機関を受診してください。水で膨らむボールはレントゲンに写りにくく、「飲んだ」という情報がないと対応が遅れるおそれがあります
- 磁石のおもちゃの事故は上のきょうだい用に買ったもので多く起きています。小さな子に触れさせず、持ち出せない場所に保管し、使わないものは処分も検討しましょう
なぜ危ないのか——体の中で「くっつく」「膨らむ」
強い磁石(マグネットセット)
直径3〜5mmほどの小さな球や立方体の強い磁石(ネオジム磁石)を、数百〜1000個まとめたおもちゃが「マグネットボール」「マグネットキューブ」などの名前で売られています。消費者庁によると、ネオジム磁石は一般的な磁石(フェライト磁石)の10倍以上の磁力があるとされます。
2個以上を飲み込むと、胃と腸、腸と腸のように、消化管の壁を挟んで引き合い、固定されてしまうことがあります。挟まれた部分は血流が止まり、時間がたつと壊死して穴が開いたり、腸閉塞を起こしたりするおそれがあります。消費者安全調査委員会の報告書には、開腹手術で取り出された磁石が多いもので37個だった事例が載っています。
水で膨らむボール(吸水樹脂ボール)
水を吸うと大きく膨らむ樹脂(高吸水性樹脂)でできたボールです。自分の重さの100〜1,000倍の水を吸うことができ、一度吸うと押しても水を出しにくい性質があります。
消費者庁の資料に掲載された国民生活センターのテスト例では、腸液を想定した液に浸けると、直径約14mmのボールが24時間後に約36mmまで膨らみました。飲み込むと胃の出口を通ったあと腸の中で膨らみ、腸閉塞を起こす危険があります。さらにレントゲンやCTに写りにくいため、誤飲したという情報がなければ対応が遅れるおそれがあります。
どんな事故が起きている?
NITEが公的な報告書と日本小児科学会の資料からまとめた一覧では、2017年から2022年までに、マグネットセットの誤飲が11件ありました。年齢が分かる10件のうち5件は3歳未満です。11件のうち6件は、兄や姉のために買ったものでした。
水で膨らむボールについては、2021年6月・10月・12月に、乳児などが飲み込んで腸閉塞などになり手術をした事例が、国民生活センターの「医師からの事故情報受付窓口」に寄せられています。国民生活センターが紹介している事例には、次のようなものがあります。
- 遊んだ1〜2時間後から嘔吐があり、4日たっても続いたため再受診。腸の中に膨らんだボールが複数見つかり、誤飲から5日後に開腹手術で取り出した
- 発熱やせき、嘔吐、食欲低下で入院。小腸の閉塞が疑われ、緊急手術で異物を取り出した
嘔吐が数日続いた事例や、発熱やせきから始まった事例もあります。
今は販売にPSCマークが必要
こうした事故を受けて、マグネットセット(磁石製娯楽用品)と水で膨らむボール(吸水性合成樹脂製玩具)は「特定製品」に指定されました。NITEによると、2023年12月19日以降は、技術基準を満たしPSCマークが表示されたものでなければ販売できません。
技術基準では、マグネットセットは「仮に誤飲しても体外に自然に出る磁力であること」、水で膨らむボールは「仮に誤飲して膨らんでも体外に自然に出る大きさに収まること」が決められています。
ただし、NITEは規制の前に買った製品が家に残っている場合など、引き続き事故が起きるおそれがあるとしています。また、PSCマークのある適正な製品にも「満3歳に満たない乳幼児に使わせない」「手が届かないところに保管する」「誤飲した場合は速やかに医師の指示を受ける」などの注意が表示されています。マークがあっても、小さな子に使わせないのが前提です。
3歳未満向けおもちゃの「子供PSCマーク」については、「子供PSCマーク」とは?で解説しています。
家でできる5つの対策
NITEと消費者庁が挙げているポイントです。
- 小さな子に触れさせない。特に3歳までの子は、身の回りのものを口に入れて確かめようとします。一緒に遊んでいても、目を離したわずかな時間で事故が起きることがあります
- 子供が持ち出せない場所に保管する。手の届かない場所に置いたつもりでも、子供が工夫して持ち出すことがあります
- 口に入れると危険なことを子供に伝える。言葉で伝えて理解できる年齢になったら、誤飲の危険性を普段から教えましょう
- 使わない製品は処分を検討する。規制前に買ったものが残っていないかも確認しましょう
- 買うときはPSCマークを確認し、リスクを理解したうえで検討する。家に対象年齢未満の子がいる場合は、購入を控えることも検討しましょう
口に入る大きさかどうかを確かめる「誤飲チェッカー」は、消費者庁の資料でも紹介されています。ただし、マグネットセットや水で膨らむボールはどれも口に入る大きさです。チェッカーは、家の中のほかの小物を確かめるのに使ってください。
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飲み込んだかもしれないときは
消費者庁は、子供が誤飲した、または誤飲の疑いがある場合は、医療機関を受診するよう案内しています。受診のときは次の点に気をつけてください。
- 基本的に吐かせない
- 飲み込んだものと同じものが手元にあれば持っていく
- 同じ型の製品やパッケージ、ネット通販の購入履歴が残っていれば、医師に見せる
特に水で膨らむボールは画像に写りにくいため、「何を、いくつくらい飲んだかもしれないか」を伝えることが大切です。小さなものの誤飲全般についてはボタン電池の誤飲の記事もあわせて読んでください。
正直に書いておく点
- 「手の届かない場所」だけでは防ぎきれないことがあります。NITEは、保管場所に置いたつもりでも子供が持ち出した事故や、上の子が遊んでいて下の子が被害にあった事故が起きているとしています
- 数が多いおもちゃは、減っても気づきにくいです。NITEも、数百個といったセットでは誤飲で数が減ったことが分からず、保護者が気づきにくいとしています。「なくなったかも」と思ったら、誤飲の可能性も考えてください
- 水で膨らむボールは、グミやキャンディと間違えて口に入れる可能性があると消費者庁は注意しています。インテリア用品として使われていたものでも同様の事故が起きています
最後にちょこっとお勉強:なぜ「1個」より「2個以上」が危ないのか
磁石は、磁石どうし、または磁石と鉄などの金属で引き合います。1個だけでも、ほかに鉄などの金属を飲み込んでいれば引き合うおそれがあります。2個以上だと、別々の場所にある磁石どうしが腸の壁ごしに引き寄せ合い、壁を挟んだまま動かなくなります。
NITEの実験では、マグネットセットの磁石は一般的な磁石の約3倍離れた距離から引き寄せられました。腸に見立てたホースを挟んで磁石が引き合い、水を流しても押し流されない様子も確認されています。強い磁石ほど、離れた場所どうしでも「つながってしまう」のです。
よくある質問
Q. 1個だけなら様子を見ていい?
消費者庁は、誤飲した・誤飲の疑いがある場合は医療機関を受診するよう案内しています。何個飲んだかを家庭で正確に確かめるのは難しいので、自己判断せずに受診してください。
Q. マグネットセット以外の磁石は?
消費者庁は、マグネットセット以外にも、おもちゃが壊れて中の磁石が出てきて、複数個を飲み込み開腹手術が必要になった事故があるとしています。文房具や時計などにも磁石は使われています。壊れていないかを日頃から点検し、外れた磁石は小さな子の手の届かない場所へ片付けましょう。
Q. 水で膨らむボールは、膨らませたあとなら安全?
この記事で参照した公的資料には、膨らませたあとの安全性についての記載は見当たりません。国民生活センターは、対象年齢未満の子供がいる家庭では、水で膨らむ樹脂製品の購入を控えることも検討するよう呼びかけています。
まとめ
- 強い磁石は2個以上飲むと腸の壁を挟んでくっつき、穴が開くおそれがある
- 水で膨らむボールは腸の中で膨らんで詰まり、レントゲンに写りにくい
- 飲み込んだ・飲み込んだかもしれないときは、基本的に吐かせずにすぐ受診。同じものやパッケージを持参する
- 磁石は上の子のおもちゃでの事故が多い。小さな子に触れさせず、持ち出せない場所に保管し、使わないものは処分も検討
- 2023年12月19日以降はPSCマークのあるものしか販売できないが、家に残っている古い製品に注意
出典
- 消費者庁「『磁石』や『吸水樹脂ボール』の誤飲に注意! -飲み込んだ後、開腹手術を要する事故が発生-」(2022年3月24日)
- 国民生活センター「乳幼児による水で膨らむボール状の樹脂製玩具の誤飲にご注意!」(2021年12月23日)
- 国民生活センター「乳幼児による水で膨らむボール状の樹脂製玩具の誤飲にご注意!(続報)」(2022年3月24日)
- NITE(製品評価技術基盤機構)「飲んだのは、小さな“時限爆弾” ~体内でくっつく・膨らむ『こどもの誤飲事故』に注意~」(2023年5月16日)
- 消費者安全調査委員会「ネオジム磁石製のマグネットセットによる子どもの誤飲事故」事故等原因調査報告書(2022年3月24日)

