停電した。冷凍庫には、何週間もかけて貯めた冷凍母乳が入っている。離乳食のストックもある。これ、全部だめになるのか。
先に結論を書きます。
- 冷蔵庫は、ドアを開けなければ2〜3時間程度は冷えが保たれるとされています。冷凍室は、すき間なく詰めて扉を開けなければ、季節によって半日〜丸1日凍った状態が保たれるといわれています(パナソニック)
- いちばん効くのは「開けない」こと。そして新しいものや温かいものを入れないこと(日立・三菱電機)
- 溶けた母乳は再冷凍できません。冷蔵庫で24時間以内、室温(約25℃)なら4時間以内に使います(カネソン・小児科医監修Q&A)
- 停電が半日〜1日を超えそうなら、冷凍庫を動かし続ける手段が必要になります。ポータブル電源で何時間動くかは、冷蔵庫の年間消費電力量から計算できます
冷蔵庫・冷凍庫は停電で何時間もつか
パナソニックの暮らし情報サイト「UP LIFE」の記事(専門家監修)から引用します。
冷蔵庫は、停電で電源を失っても、ドアを開けなければ2~3時間程度は冷えが保たれるので、ドアを不必要に開閉しないことがポイントです。
停電が3時間ほど続くと、冷蔵庫内の温度がゆるやかに上昇するため、中の食材がだんだん傷んできます。
冷凍室にすき間なく冷凍した食材を詰めておけば、まさかの停電になっても、季節によっては(扉を開けない状態で)半日から丸1日くらい凍った状態が保たれるといわれています。
| 場所 | 停電で冷えが保たれる目安 | 条件 |
|---|---|---|
| 冷蔵室 | 2〜3時間程度 | ドアを開けない |
| 冷凍室 | 半日〜丸1日くらい(といわれている) | すき間なく詰めてある・扉を開けない・季節による |
冷凍母乳は冷凍室にあるので、短い停電なら開けずに待つだけで守れる可能性が高い、ということです。逆に、様子を見ようと何度も開けると、そのたびに冷気が逃げます。
停電中にやってはいけないこと
日立の冷蔵庫のよくある質問から。
庫内温度の上昇を抑えるため、ドアの開け閉めをすばやくし、できるだけ開閉を控えるようにしてください。また、新たに食品やあたたかい蓄冷材を入れると、冷蔵庫内の温度が上がり逆効果になってしまいますのでご注意ください。
三菱電機も「新たな食品を入れない」を挙げています。搾乳したばかりの母乳を停電中の冷凍庫に入れるのは避けてください。庫内全体の温度を上げてしまいます。
冷凍母乳のルール——溶けたら再冷凍できません
母乳バッグのメーカー・カネソンのQ&A(昭和大学医学部 小児科学講座 水野克已教授の監修)から、停電時に関係する部分を引用します。
冷凍した母乳を解凍したら、冷蔵庫に入れて24時間以内に使い切ってください。…また、室温(約25℃)であれば4時間以内に与えてください。
解凍した母乳の再冷凍、あたためたものや飲み残しの再保存はできません。
理由も書かれています。
冷凍することで、ばい菌を食べてくれる細胞のおおくは死んでしまうので、あたたかい環境で時間が経過すれば、母乳のなかでばい菌が増えてくるかもしれないのです。
温め方についても。
熱湯や直火・電子レンジでの解凍は、母乳に含まれている免疫体の破壊や母乳バッグが破裂する危険性があるので絶対に行わないでください。
停電中の判断表
| 冷凍母乳の状態 | どうするか |
|---|---|
| カチカチに凍ったまま | 冷凍室を開けずにそのまま。停電が長引きそうなら次の章へ |
| 完全に溶けた | 再冷凍しない。冷蔵なら24時間以内、室温(約25℃)なら4時間以内に使う。使い切れない分は処分 |
| 一部溶けかけている | 「半解凍なら再冷凍できるか」は、カネソンのQ&Aに記載が見当たりませんでした。安全側で「溶けた」扱いにして、早く使う分に回すのが無難です |
カネソンのQ&Aには、余った母乳は沐浴のときに使うこともできるとも書かれています。
冷凍の離乳食ストックも、「開けない」「新しいものを入れない」の原則は同じです。
停電の前にできる準備
日立とパナソニックの記載から、今日からできることです。
- 冷凍室はすき間なく詰めておく——凍ったもの同士が保冷剤の役割をする(パナソニック)
- 保冷剤を多めに凍らせておく。停電中は冷蔵室に移すと温度上昇をやわらげる(日立)
- 凍らせたペットボトルやごはんも保冷剤代わりになる(パナソニック)
- 台風など停電が予想できるときは、冷蔵室を減らし、冷凍室を多めに(日立)
半日〜1日を超える停電に備えるなら
ここまでの方法で守れるのは、半日〜1日くらいまでです。地震や大雪で停電が数日続くと、冷凍室も持ちこたえられません(2018年の北海道胆振東部地震では全道停電が起きています)。
そのときに冷凍庫を動かし続ける手段が、ポータブル電源です。何時間動くかは、冷蔵庫の「年間消費電力量」から計算できます。
計算してみます(パナソニックの401L冷蔵庫の例)
パナソニックのトップユニット冷蔵庫 NR-E400T(401L)の公式仕様です。
| 項目 | 公式仕様 |
|---|---|
| 年間消費電力量 | 590kWh/年(JIS C 9801-2006年の測定方式) |
| 定格消費電力 | 電動機 116W/電熱装置 184W |
590kWh ÷ 365日 = 1日あたり約1.6kWh。24時間で割ると平均で約67Wです。ポータブル電源は変換ロスがあるので、実際に使えるのは公称容量の8割程度として計算します。
| ポータブル電源の容量 | 実際に使える量(8割) | この冷蔵庫が動く目安 |
|---|---|---|
| 500Wh級 | 約400Wh | 約6時間 |
| 1,000Wh級 | 約800Wh | 約12時間 |
| 2,000Wh級 | 約1,600Wh | 約1日 |
ご自宅の冷蔵庫でも同じ計算ができます。冷蔵庫の側面や取扱説明書にある「年間消費電力量」を365で割り、さらに24で割れば平均の消費電力(W)が出ます。
正直に書いておくこと
- 年間消費電力量は平均値です。夏場・ドアの開け閉め・霜取りのタイミングで、実際の消費は上下します。上の時間は目安です
- 冷蔵庫の定格消費電力(この例では電動機116W+電熱装置184W)より、ポータブル電源の定格出力に余裕があるものを選んでください。出力が足りないと動きません
- 冷凍母乳を守るだけなら、冷凍室を開けずに待つのが先です。ポータブル電源が必要になるのは、停電が半日〜1日を超えそうなときです
- 500Wh級で冷蔵庫を丸1日動かすのは無理です。「冷蔵庫も守りたい」なら1,000Wh級以上が現実的な線です
向いている家庭・向いていない家庭
| 向いている | 向いていない |
|---|---|
| 冷凍母乳をまとまった量ストックしている(仕事復帰・預け入れ予定など) | 冷凍母乳は数本だけ |
| 地震・台風・大雪で長い停電が起きやすい地域 | 停電がほとんどない地域で、数時間で復旧してきた |
| 停電時にスマホ充電・照明・電気毛布も使いたい | 冷蔵庫のためだけに数万円はかけたくない |
ポータブル電源は冷蔵庫以外にも使えます。冬の停電で寝床を温める電気毛布なら500Wh級で約10時間動く計算を停電で赤ちゃんが寒いで書きました。容量ごとの選び方は子供がいる家のポータブル電源の選び方にまとめています。
当ブログが提携しているメーカーは次の2社です。容量(Wh)と定格出力(W)を、ご自宅の冷蔵庫の数字と見比べて選んでください。
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発火などの安全面はポータブル電源は発火する?を参照してください。
よくある質問
停電が終わったら、冷凍母乳はそのまま使えますか?
凍ったままなら、そのまま冷凍保存を続けて大丈夫と考えられます。一度溶けたものは再冷凍しないのがカネソンのQ&Aの考え方です。溶けたものは冷蔵で24時間以内に使ってください。
保冷バッグに移しておけば長持ちしますか?
停電中に冷凍室を開けて移し替えると、その間に冷気が逃げます。基本は「開けない」です。ただし、避難するなど家を離れる場合は、保冷剤と一緒に保冷バッグに入れて持ち出す選択になります。
溶けた母乳を温めるのに、電子レンジは使えますか?
使えません。カネソンのQ&Aは「熱湯や直火・電子レンジでの解凍は…絶対に行わないでください」としています。ぬるま湯(30〜40℃)につけて温めます。
停電でミルクも作れなくなったら?
粉ミルクの調乳には70℃以上のお湯が要ります。停電時の調乳と液体ミルクの使い方は停電でミルクが作れないにまとめました。
まとめ
- 冷蔵室はドアを開けなければ2〜3時間程度。冷凍室はすき間なく詰めて開けなければ、季節により半日〜丸1日といわれている(パナソニック)
- 停電中は開けない・新しいものや温かいものを入れない(日立・三菱電機)
- 溶けた母乳は再冷凍できない。冷蔵24時間以内・室温4時間以内。電子レンジ・熱湯は使わない(カネソン)
- 停電前に冷凍室を詰める・保冷剤を多めに凍らせる
- 半日〜1日を超える停電に備えるなら、ポータブル電源。年間消費電力量÷365÷24で平均W、容量の8割で何時間もつか計算できる。401Lの例で1,000Wh級なら約12時間
📌 あわせて読みたい:停電でミルクが作れない/停電で赤ちゃんが寒い/子供がいる家のポータブル電源の選び方

